アメリカの職場における「平等主義」。面接だって神経使ってたいへんなのです

前職で日本の大学や専門学校をお客様として、職場体験やキャリア研修を主とするロサンゼルスツアープログラムを提供していた。学生さんたちはだいたい20歳前後。不思議と彼らがアメリカに来て驚くのが、「女性がたくさん職場にいる」ということだ。

え、今2014年では…?と逆にこちらが驚かされる。女性学生たちも、「女性でもキャリアを築いていけるものなのでしょうか」とか質問したりして、どれだけセルフイメージ低いの、というか、日本はいったいどこでどう止まってしまったのだ、と心配になる。

日本でもだいぶ前から雇用機会均等法で男女の区別はしてはいけないことになっているが、アメリカは性別はもちろん、他にも差別禁止項目が厳格に設けられている。Equal Employement Opportunity (EEO)という法律では、下記を採用や昇進、待遇の基準要素としてはならないことを定めている。

  1. 年齢(Age)
  2. 性別(Sex):妊娠しているかどうかも含む
  3. 国籍/出身国(National Origin)
  4. 人種(Race)  
  5. 肌の色(Color)
  6. 宗教(Religion)
  7. 障害(Disability)
  8. 遺伝的特性(Genetic Information)

性的指向(Sexual Orientation)や性転換者は、この法律には含まれていないが、別な法律や過去の事例を元に、同様に差別してはいけない対象となっている。

具体的に日常ではどんな場面があるかと言うと、まず最も重要なのは「面接」だ。これは面接に望むすべてのスタッフにあらかじめ研修をして徹底しておかないと、極めてリスクが高い。とくに日本から赴任してきたばかりのマネージャーが面接官になった場合、必ず違反をしてしまう。

面接では、上記に関わる内容を直接聞いてもいけないし、推測できる情報を聞き出してもいけない。例えば、「高校は何年に卒業したの?}と聞けば、年齢が推定できる。だから不可。履歴書に勝手に書いてくる場合もあるが、そういうことをさせないためにも、企業は通常、規定のアプリケーションフォームを用意して、それだけを元に面接を行うようにしている。

日本語の能力や文化の理解度を聞くのはいいけれど(あくまでも仕事に関係しているならば)、日本で生まれたとか、両親が日本人だとか、日本人だとかはNGだ。

面接経験の少ない社員だと、良く相手との距離を縮めようと家族構成などを聞いてしまったりするが、それもNG。結婚してますか~とか、旦那さんは何してますか~、とか、日本は出身、どこですか~、お子さんを作る予定は~?とか、すべてNGと考えて良い。

だから、日本語の履歴書のフォーマット自体、全部ダメ。年齢、住所、顔写真(外見的特徴)、扶養家族の有無とか、もう駄目なことのオンパレード。そもそも日本では、それらの情報はどうやって使われるのだろう…。すっかりこちらのやり方に慣れてしまったせいで、逆に空恐ろしくすら感じてしまう。

不当に採用されなかった、あるいは解雇された、など不服があれば、2年前に遡って訴訟ができることになっているので、企業は応募書類を取っておかねばならない。僕らがいたようなスモールビジネスではそれほどでもないが、大企業になればなるほど、「取れる」と判断した弁護士が積極的になりがちなので、要注意だ。

でもまあ、そこまで法律で守ってやらないと、企業任せにしていたらとんでもないことになってしまう背景があるわけだ。アメリカは、昔も、そして今も、「イコール(平等)な権利」を人々に保証する「フェア(公平)」な社会であろうと闘っている。そこは素直に素晴らしいと敬服する。