公団住宅の「老後」。エレベータのない5階建ての空き家が増える

danchi

昨日から、何だか空気がグッと涼しくなってきましたね。朝晩も涼しくて、昨夜は初めて窓を閉めて寝ました。秋の予感。今日、ロサンゼルスに戻って、1週間後にまた帰ってきますが、本格的な秋の日々を過ごすのが楽しみです。

「あなたの家を売りませんか?」という不動産会社さんのチラシが郵便受けに入っていて、ふと気になり、昨日訪ねてきました。アポなしでフラッと行ったのに、きちんとした方が対応してくださり、さすが日本だなあと感動。 

チラシに惹かれたのは、自分が感覚的に絶対そうなるよな、と思っていたこととマッチしていて、やたらと響いたことが理由でもありました。チラシには、「◯丁目◯街区内で5階からの住み替えを検討している方がいるので、低層階を探しています!」と書かれていました。うちは2階なので、条件にはぴったりマッチしています。

うちの周りは、40年前に建てられた公団住宅ばかりの埋立地の街で、分譲区域はとくに定期的に外装をやり直すので、外観はまったく老朽化を感じさせません。でも構造から改築できるわけではないので、いろいろなことが「昔ながら」であることは変わりません。例えば、5階建てでエレベーターがないという事実。

40年前に販売された住宅地ですから、その時に30代で買った人はすでに70代。両親のように40歳前後で買った人たちは、80歳前後になっています。僕だって、中学に入りたての5月末に12歳で引っ越してきて、もう52歳ですからね。老後を考えて2階を選んだそうですが、母親も足が悪くなって、2階すら杖をつきながらでもサクサク動くのは厳しいです。父はちょっと前まで平気でしたが、今はフラフラしちゃうので病院内でも車いす。多少、良くなって帰ってきたってエレベータもないので、生活は引きこもり。病院に行くとなったら一大行事でしょう。

正直な話、車社会に慣れてしまった自分だって、この歩く生活、階段生活は辛いです。買い物に行っても、野菜や果物、豆乳、ワインなんかを考えもせずにカゴいっぱいに買ってしまって、両手に下げたビニール袋の取っ手で指が千切れそうになりながら駅前からの6−7分をやっとこさ歩いてきて、そして2階へと持って上がる…。それって、こんなに大変なことなんでしたっけ?と驚いています。もちろん自転車使えば、行き来は便利になりますけど、階段の苦労はなくなりません。

僕はこれでもマラソンを走る人で、トライアスロンもやる人で、筋トレもそこそこしてて、とにかく肉体的には年齢に対して遥かに元気な部類なわけですが、それでもこんなにきつく感じるのだから、70歳、80歳、あるいはそれ以上となったら、2階に住むのがやっとではないでしょうか。

買った頃はエレベーターのある高層マンションとかそれほどなかったかもしれないし、5階なんてスタスタ上がれたのかもしれないですが、妹とも「俺達でもイヤだよね」って話しました(苦笑)。

そんな背景があって、今、高層階(4−5階)から低層階への住み替え需要が増えているのだそうです。幸い、うちは2階なので、売ろうとしたら条件的には良い方みたいですね。普通に考えて、今後は4階や5階の空き家がどんどん増えていくのかなあと思います。

そうなった時にはどうなるんだろう? 一気に値崩れするのか、でもそもそも値段の問題というより体力的な問題なので、値下げして売れるわけではないでしょう。後付けエレベーターみたいな不思議な装置が発明されて問題が解決されるのか。思い切って取り壊して建て直すのか…。人間の老後もたいへんだけど、団地の「老後」は、便利な立地であったとしても、結構厳しいものがあるんだなあと思いました。全国にこういうところ、いっぱいありますよねえ。

最近、賃貸も空きが多いので、公団もリフォームをして価値を高めてから貸すようになっていて、うちの辺りで2LDKで6万円くらいが相場と聞きました。東京駅まで40分弱なので、都内の東側なら負荷なく通える距離です。逆に、周りの賃貸がきれいなので、今のうちの部屋をそのまま貸し出すのは難しい。かと言ってリフォームしてから貸すって言っても、じゃあそのリフォーム期間どこに住むのか、リフォーム代分の付加価値をつけて貸せるのか。売る時に、経費かけた分のもとが取れるのかというと全くそうではないので、売るなら今すぐ売った方が得策のようです。

今、部屋の断捨離を急ピッチで進めている我々家族ですが、さて、親にとっては強烈に思い出深いであろうこの部屋を売る勇気が持てるのでしょうか。思い入れの深さと、2階へ上がるたいへんさと、緊急度と、引っ越しに伴う精神的な難易度と、お金的な話と、都内へ通う妹の利便さと、いろんなファクターが混在していて決めるのは簡単ではありません。

つい1週間前まで、この部屋を売るなんて選択、どこにもなかったですからね(笑)。

僕はこの40年で7−8箇所、違う部屋に住んでいるし、どこへ行っても楽しく暮らせているので、まったくと言っていいほど思い入れはありません。変化は進化。引っ越しでもしない限り、この部屋の断捨離が「完結」しないのは分かっています。だから、ひとりで決めていいよって言われたら即刻売っちゃう(笑)。次、どこに住もうか~?って、すぐ次のことに意識が向かってウキウキしちゃう。

超ドライやな~って言われますが、実際そうだな、と我ながら思う今日この頃。