就活の現実を描くCMが賛否両論で放送中止。希望感がある結末の代案を4つほど考えてみた

東京ガスの就活をテーマにしたCM(上のビデオ)が、内容が辛すぎて放送中止になったという話をFacebookで知りました。

ドラマ仕立てのCMは臨場感があり、あるからこそ見てて切なくて。最後にホットするのかと思ったら、おお、そう来るか、という流れになっていて、こちらまで心がヒンヤリ…。

でも、東京ガスで作ったお母さんの愛情鍋で元気になって、最後には「まだまだ」ってまた前を向いて歩き出す。そんなストーリーです。

最後に一応の希望感は演出してみたものの、あんまり全体を救えてなくて、「この子は本当にこの先、就職口が見つかるのかな。また駄目だったら、今度はどうするんだろう」と不安をよぎらせる内容ではあります。

それだけ厳しいのが今の就職活動の現状なのでしょう。結末については、いろいろ議論もあったことでしょうが、リアルに作った分、共感も呼んだけれど、同時に辛すぎると言う人も出たわけですね。

そもそも就活そのものが後味悪いマラソンレース

ネットでは、クレームが本当にあったのか。あったとしても、そんなことでいちいち放送中止にするようなことなのか。企業の姿勢は? など、議論のテーマはそちらに集中しているようです。

僕は自分が就活で成功していないし、就活というものの価値観そのものを受け入れられていないので、テレビという憩いを求める場で、「CMとして」このような現実をあえて見せられたくない派です。就活をテーマとしたドキュメンタリーで見るのとは意味が違う。選択することなく不意にポンっとこれが来たら、結構こたえるなと。下記で触れますが、問題は「結末」です。

テレビを見ている家庭のことを想像してみても、おろおろしてしまう家族、家族の手前、また気まずくなる学生、あるいは、ひとりで見ていて救われないまま呆然としてしまう就活学生がいたりするかもしれない。映像の力はなかなか辛辣です。

そもそも、決まっても決まらなくても、就活は「後味悪い」ものなんだと思います。別に何かのゴールでもないのにマラソンみたいに走らされて、ルールなんか同意したわけでもないのに勝手に決まってて。何が勝ちで何が負けかも分からない。でも皆がやるからしょうがない。そうしなければ一部の企業では働けないことになってるからしょうがない。

でも本当は、もっと厳しい現実は、働き出してから体験することになるわけです。入社した途端、また別のタイプのマラソンに自動エントリーされちゃったことに気づく。そこから抜けられるのは、どうも何十年後のことらしい。果てしない距離の長さにボーっとして5月病になってしまう新卒がいても全然おかしいことじゃないと思います。あ、やっぱり俺できないわって、ずいぶんと鍛えられたはずの今の自分でも思います(苦笑)。

結末を変えたら救われたのか? 4つほど考えてみました

ではどういう結末だったら、もう少し希望感が生まれたのだろう、自分の中の違和感は救われたのだろうかと、勝手ながら代案をいろいろと妄想してみました。すべて、受かるかもと思っていた面接でやっぱり落とされちゃった後のシーンです。

  1. 【お母さんと起業編】
    「就職なんてしなくていいわ、お母さん、今度お店を開くことになったのよ。ぜひ手伝って」と母が誘う。下町の小さなレストランでは東京ガスが大活躍。娘もイキイキとメニューを考えたり、お客さんと接したり、フランチャイズ計画なんか立てて輝いている。企業への就職だけが人生の道ではないことを訴えて、爽やかに終わる。
  2. 【アメリカ留学編】
    「あなたいつもアメリカに行きたいって言ってたじゃない。これは何かのサインよ。来年春からのMBA留学、まだ申し込み間に合うわよ。応援するから国際人になって世界を舞台に活躍しなさい」と、鍋をつつきながら、母が留学パンフレットを差し出して薦める。最後のシーンは空港。娘を見送る母。希望に満ちた娘が涙ぐんで手を振るも、キリッとゲートに消えていく逞しい姿で終わる。
  3. 【自ら社会起業編】
    NPO主催の社会起業コンテストに応募していた審査が通って最優秀賞に選ばれたと通知が届く。なんとスポンサーを得て事業化できることになった。就職を飛ばして、一気に社会起業家になって世界を舞台に働き始めた娘の姿をFacebookで見る父と母。うっすら涙を浮かべながら微笑んで、2人で幸せに鍋を突く。
  4. 【田舎で農家経営編】
    「お婆ちゃんの家、後継ぎがいなくて農家を止めなくちゃいけないっていうのよ。お母さん、田舎に引っ越すことを考えてるんだ」と母から相談あり。自然豊かな田舎で有機野菜農家を家族で経営する選択をした2人。お父さんは東京で単身赴任(東京ガスのCMだから全員では引っ越せない・笑)。数年後、フレッシュ野菜を田舎から持参した母と娘。それを鍋にして父と一緒につつく団欒シーンで終わる。

いかががでしょうか。どれも明るい選択ではありませんか? ということで、僕が考える明るい結末は、すべて「“いわゆる就活”の否定」になってしまうことがわかりました(笑)。

僕があのCMに救いを感じられないのは、それでも企業に新卒で入ることにこだわるの?ってところなんですよね。今の時代、代案はいっぱいあるはずじゃないですか。なぜ昭和の時代のような結末に当たり前のように落ち着くのだろう? 公園でブランコって、これは三丁目の夕日か? 現実を直接体験していないお母さんの応援は、本当に慰めになるのでしょうか? (僕の時にはそれが少し負担でした。)えっと、今は平成何年なんだっけ…?

この夏も、前職では大学生のロサンゼルス職場体験研修プログラムを実施します。人数もどんどん増えていて良いのですけど、いつも彼らの中に選択肢がとても少ないのが可哀想に見えます。大人がそれを見せてあげてないってことなのでしょう。

彼らの両親はまさに僕の世代(…汗)。バブルの時代に20代を過ごした世代です。でも、あの頃と今とは違うよね。大人はもっともっと、今だから叶えられる新しい時代の夢を語って聞かせてあげようではありませんか。