間違いを認める勇気、あやまる勇気。信頼回復に必要なのは 土下座や涙ではない

公開お詫びが日常の日本のニュース

深々と、頭を下げる人の映像が、日々、日本のニュースで流れています。

問題と、告発と、開き直りと、謝罪とが、

なんだか日本の新しい文化になったみたいに、

繰り返しメディアやSNSを賑わせていますよね。

そして、ひとたび「罪」が公になると、

メディアやネットで、ここぞとばかりに人を叩きまくる。

よっぽど普段から抑圧された怒りを溜め込んでいるのかな、と

ザラッとした気持ちになります。

テレビの謝罪会見は、「公開いじめ」と言ってもいいくらいに

正義のナイフを振りかざして、めった斬り。

人はすぐに刺激に慣れるので、言葉も口調も掘り下げ方も、

どんどんエスカレートして、殺伐としていきます。

日常的に、こういう「責め苦」を見ていると、人はつい怖くなるわけです。

間違いを起こすことも、間違いを認めることも。

これが、なんか、長い未来を考えた上で、

一番の「毒」になってないかな、と思ってしまうのですね。

炎上するときの3つの共通点+1

なにかのできごとが、「炎上」したり、必要以上に広がって大ごとになったりするとき、たいていは

  1. 対応が遅い
  2. 間違いを認めない
  3. 謝らない

の3つが絡まっていることが多いようです。

それと、もうひとつ大事なのは、

「未来に繰り返されない」という確信

が感じられるかどうか。

反省しています、ということを、土下座で示すのもいいけれど、

泣いて後悔の念を吐露するのもいいんだけど、

それより何より、「未来を語る」ことの方が、はるかに大事なんです。

クレーム対応の鉄則を覚えて危機を最小限に抑える

これは、通常のクレーム対応でも、同じこと。

危機管理の基本です。

これほどまでに、危機管理が大切だと言われ続けているにも関わらず、

しらばっくれたり、弁解したり、上司をかばったりするケースがいまだに多いですよね。

これだと、どんな風に改善されるのか、果たして本当に反省してんのかよ、と

納得感が持てないわけです。

アカウンタビリティ=説明責任の基本をわかってないと、

企業イメージも、個人の信用度もガタ落ちです。

ここで少し、クレーム対応において、私が過去に心がけていたこと、

スタッフに徹底して、仕組みとして成功してきたことを共有します。

あくまでもカスタマーケア的な観点であり、

大企業の不祥事とはレベルが違った事例かもしれませんが、

基本は同じところにあるので、何かの参考になれば。

まずは感情を出し尽くす

私も、長いことクレームが起こりうる仕事に社長として携わり、

「最も怒りがおさまらない」方々のお相手をしてきました。

その過程で、一生の宝ものと言っても良い、人間関係の真髄を教えていただきました。

自分(たち)が悪いのであれば、いち早くそれを認めて対応すること。

早ければ早いほど、相手の気持ちも和らぎます。

間違いを認め、素直に謝罪に出向き、公に認め、

誠意を持って、相手の気が済むまで「怒りのシャワー」を浴びます。

怒りはとても強いエネルギーなので、怒り続けるって結構たいへんで、

相手もやがては疲れます(苦笑)。

途中に言い訳とか、説明、とかはさんでしまうと、逆鱗に触れます。

日に油を注いでしまいますので、じっと我慢が基本です。

大事なのは、コーチングでも基本となる「傾聴」。

人は皆、痛みを抱えていて、怒りはその表層的な一次感情に過ぎません。

その人は、ただ、困っているだけ。

だから、怒っている。

その痛みの根っこを理解し、共感し、同調すれば、

自然と誠意ある対応が何かがちゃんと見えてきます。

相手が疲れるまで、怒りを出し尽くさせてあげることが、誠意のひとつでもありますし、

次のフェーズへ移行していくために必要なことでもあるのです。

手みやげを用意する

出向くときは、相手が驚くほどの「おみやげ」を持っていくと、

たいていは、最後にニコニコと送り出していただく関係に落とし込めます。

ケーキみたいなお菓子も、まずはつかみとしてOK。

社員の皆さんにご迷惑かけましたので、などと差し出せば、

嫌がる社長はいません。

(これには他にも深い意味も、特別なやり方もありますが、ここでは割愛します)

あとは、「悪いと思っている」ことを形で示す賠償の品も必要です。

よく「倍返し」みたいなことを言いますが、

実際には、3倍返しくらいが、相手の驚きを誘うにはちょうど良いみたいでした。

裁量権あるトップが自ら前面に出る

もちろん、トップの私自身が、もったいぶらずに最初から出向く。

それこそが、最大の「誠意」の示し方でもあり、

次に関係をつなぐ意味でも、大切なことだったのを覚えています。

問題の解決策を提示して納得と安心を勝ち取る

そして、最後に未来の関係性を決めるのは、

根本的な予防策となる、解決策の提示です。

すばやく原因を見定め、「自分たちが」どんな具体的な改善を図り、

再び同様のことが起きないように防ぐ「仕組み」を作り上げたかを説明。

それが、相手の納得感を引き出すことができたなら、

そこで初めて、「信頼」「信用」というものが、再び取り戻せるのです。

ときには、そこまで見事な対応をしたことに「感謝」までしてもらえたりします。

クレームが、最後に感謝という深い信頼に変わる。

それ、最高の結果ですよね。

「雨降って地固まる」は意外に難しくない

そこで取り戻した信頼は、逆に以前のふわふわした確証のないものとは違い、

実は、より強固なものに置き換わっていたりするのは、感じていただけますよね。

雨降って、地、固まる

って、きっとそういうこと。

とにかく、スパッと切れ味良いナイフのような潔さっていうのが、

人の印象を変えるのに、もっとも役に立つもの。

もったいぶったり、出し惜しみしたり、言い訳したりは禁物です。

会見の長さが誠意につながるわけじゃない。

涙が誠意に見えるわけでもないのです。

逆説的な言い方に聞こえるかもしれませんが、

これがないと、実は怖くてできないことだったりもします。

今も売れ続けるベストセラー
「嫌われる勇気」
本当のテーマはこれだ

人間関係をとてもスムーズにしてくれる秀逸な本です。

まだの方は、ぜひこの機会にご一読を。