創意工夫でドーナツだってトレンディなデザートとしてビバリーヒルズでビジネスになる

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2013年夏に、ニューヨークの「DOMINIQUE ANSEL BAKERY (ドミニク・アンセル・ベーカリー)」が火をつけてブームになったクロナッツ。クロワッサンの生地で作ったドーナツで、一流のシェフが手がけたものだけあってジャンクというよりも洗練された商品になっています。今もまだ行列が絶えないらしい同店も、2015年、いよいよ日本にも進出予定だそうですね。

以前のブログ記事にも書いたように、その後、流行を追うように様々なハイブリッド・デザートが出ては消えていったのですが、ビバリーヒルズに近いロケーションにある小さな店舗の「fonuts(フォーナッツ)」は、堅実に生き残っています。

※ハイブリッドデザートの記事はこちら(結構、書いていました…) ↓

クロナッツに続けと続々出てくるハイブリッド・デザート。今度はワッフルとドーナツでWonut(ウォーナッツ)

続報ハイブリッド・デザート。クロナッツの元祖が発表した「ワフォガート」ほか

なんと! ラーメンとドーナツの融合「ラムナット」が出現か。ハイブリッドデザートのブームも末期症状?

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そもそもフォーナッツは、ハイブリッドデザートではなく、ブームに乗って出てきたトレンディ商品でもありません。2011年に創業。オーナーは、人気デザートシェフと、キャリアあるグルテンフリーのデザートシェフとがタッグを組んで始めたお店。

ビバリーヒルズやハリウッドには、健康志向、美容志向の人々が集まって住んでいます。その意識の高さで全米をリードする発信地でもあり、普通のドーナツショップは、まず見当たりません。

白い粉、白い砂糖、悪い油を使ったものが流行る土地柄ではなく、最先端の健康食品トレンドを意識して、小麦粉を使わないグルテンフリーのドーナツや、卵すら使わないビーガンのドーナツを考えたのが、この店というわけです。

しかも油で揚げておらず、オーブンでグリルするか、「蒸す」かという徹底ぶり。甘さも控え目。しっとりと濡れた感じの食感は、ドーナツというよりケーキに近いものがあります。

そう、形がドーナツ型をしているだけで、穴が開いていなければ、ケーキとして大満足でいただくと思います。そういう風に思えば、3ドル50セント(350~400円くらいな感覚)は決して高くないかもしれません。

なによりも、さすがに一流のデザートシェフの手によるものだけあって、ひとつひとつのデザートとしての完成度が素晴らしい。味のハーモニーが繊細で、上品で、奥深いのです。だから、ひとつでものすごい満足感がある。

これはドーナツと比べて論じてはいけない別物なんだ、と、食べればよく分かります。

友人が食べたのは、ストロベリー・バターミルク。写真トップの私がいただいたのは、ココナッツ・パッションフルーツ。いずれも激ウマで驚きました。軽く考えていてごめんなさい、という感じです。早く全種類、制覇してみたい(笑)。

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6つほどある店内のカウンター席で長々とおしゃべりしていたのですが、その時に話題になったのは、「この辺の家賃って高くないのかな? やってけるの、これで?」ということでした。

ハワイの中心地、ワイキキにあるオフィスビルの家賃相場は頭に入っていますが(また随分と上がっているでしょうが)、そういえばビバリーヒルズやウエストハリウッドからほど近い、このレストラン街の家賃相場は知らないや、と思って、早速、家に帰るなり調べてみました。

お店の数件隣にあるテナントスペースが、下記のような値段で出ていました。SFというのは、スクエア・フィート。日本の平米(平方メートル)や坪に対して、アメリカでは平方フィート辺りいくら、という単位で、家賃や不動産価値を表します。

月額の家賃が、平方フィート辺り3.05ドルである、という広告ですね。計算上3ドルとすると、この物件は1100SFと言っているので、家賃が3300ドルということです。

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ひじょうに安い!というのが、ハワイの物価に慣れてしまった人の率直な感想です。

ワイキキのオフィスビルが3.50~4.50ドルというところで、路面に面した店舗スペースだと、場所によって15~40ドルまで跳ね上がっていきます。

カパフルのちょっと外れとか、ワイアラエとかで、4−8ドル前後という感じかと思います。

それと比較すると、ロサンゼルスのおしゃれエリアのレストラン街で、この家賃相場というのは、なかなかに安く感じてしまいますね。

日本と比べてどうなのかな、と坪単価で見てみると、今のレートでだいたい1万2000円くらいになるのかな。例として麻布十番を調べてみたら、1階店舗スペースの坪単価が2−4万円の範囲でした。ロサンゼルスの方がはるかに安いんですね。

フォーナッツの店舗スペースは、500~600平方フィートくらいの広さだったので、月々の家賃は1800ドル程度です。光熱費もロサンゼルスはハワイの5分の1くらいなので、しょっちゅう業務用のオーブン使ったとしても、せいぜい200ドル位かな。常時、2人が働いているようでしたので、シフト入れると4人くらい? 彼らのお給料が固定費となりますね。仮に月に1万ドル。

ドーナツが3.50ドルで、小さなコーヒーが2.70ドルで、タックス入れて6.80ドルでした。なかなかお高いです。それがひとりの使う平均と低く見積もったとして、では、何個売ると、採算取れるのでしょう。

粉物は原価率が低く済んで、とても良いビジネスだと一般的に言われます。お好み焼きで10%くらいとか。コーヒーの原価も紙コップやフタを入れて高く考えても、きっとそんなものですよね。まとめ買いをする人もいるでしょうから、数日で家賃分は回収し、その他の固定費も1-2週間で回収し、あとはチャリン、チャリンと利益が積み重なっていく印象か…。

ふーん…なるほど。

とはいえ、ロサンゼルスは人がたくさん歩いて通るような社会ではないので、偶然立ち寄るというファクターが計算できずに難しいところはあります。通っても何屋さんか分からないので、知らないと入ろうとはしないでしょう。

広告媒体もほとんどなし。マス媒体使っても、エリアが広すぎて効率悪すぎます。新小岩駅前の小さな個人商店が、読売新聞の東京版に広告してもしょうがない、みたいな感じ。

プレスにいかに書いてもらえるか、とか、インスタグラムなどのSNSを上手に使ってクチコミファクターで話題を呼ぶとか、食べログを巨大にしたような口コミサイト「Yelp」でどう皆に書いてもらうか、そっち側の方がはるかに効果的な市場です。

フォーナッツのオーナーも、TVに出演して盛んにパブリシティを獲得していました。USP(ユニーク・セリング・ポイント)が明確で、フィロソフィが時代にマッチしていると、本当にメディア受けしますね。

ハワイで商売人を20年続けてきた友人と、そんな話しでいろいろ盛り上がった昼下がりでした。