乳がんを克服した母親から「長生きしててもつまらないわね~」と言われたら

僕の周りにいる同年代の友人たちを見ていると、両親共に健在です、という方はだんだんと少なくなってきています。海外に住んでいると不便なことのひとつに、親や日本の親戚に何かあっても、すぐに会いに行けない、ということがあります。

日本でも距離が離れていると同じかもしれませんが、海外の場合、今日報せを聞いて、今日すぐにフライトに飛び乗れる人は稀だと思います。どうしても一日遅れで明日。となると、最初の一報から2日くらい経って到着するようなタイミングになるかもしれません。

僕の両親は、父が昭和9年、母が10年の生まれで、今年79歳と80歳です。80歳と聞くと、その数字の響きに重みがズシッとありますが、父も淡々と元気に生きていて重い病気もしたことがなく、若々しいと言えばそうかもしれません。

対する母も、きっと年齢にしては若く見える方でずっと来たかもしれません。しかし4年前に乳癌の手術をして全摘出。リンパ腺も取り除いたことからむくみがひどく、慢性的な痛みと暮らしているようです。

もともとがかなり若い頃から高血圧で、よく寝込んでいました。薬で抑えたりしつつ、ずっと長くつきあってきた症状。外食などまったくしないので、自分の作るものだけで生活習慣病と言われるものになってしまった、というところが、若干救いがなくて辛いです。でも、身体に悪そうなものなど、一切食べないんですけどね。

一時は水泳をしたり、フラを習って発表会に出たり、ハワイに遊びに来たり元気でしたけど、高血圧に糖尿も加わり、乳がん、それから家で転倒して足をひどく痛めたりしたことから、まったく外に出なくなりました。

でも、身体が弱っている、というのではなく、多分、根っこは元気なんです。

生きる希望とか欲望とかを見いだせず、楽しいことがまったくない、ということから、寝てばかりいるように見えます。いや、本当は身体も辛いのかもしれないけれど、そのくらいの状態で元気に活動的にしている人はいっぱいいるように思えます。

父親が必要な買い物をして、病院に行くときはタクシーで一緒に付き添ってとやっていますが、これがどちらか片方になったらどうなっていくのでしょう。まだリアルに想像ができないでいます。

お医者さんに行くと、食事をもっと減らすことと薬をきちんと飲むこと以外には言っていただけないようで、今の食事量もものすごく少ないんですけど、さらに減らすの?と驚いてしまいます。でもお医者さんの言うことは絶対、なんですよねえ。

最近では電話すると「元気だけどつまらない」的な発言をされてしまう。そんな時、長男で海外暮らしが20年にもなって、当面帰るつもりもない自分は、いったい何を言ってあげたらいいのでしょう。

「なんか新しいこと、趣味とか始めてみればいいじゃない?」と明るく言ってはみたのですが、自分のことを未来形で見れなくなっている人には、まったくもって響かず。今さら何を…みたいな反応で残念でした。

「じゃあ明日から何して生きるの? そんな人生、楽しいの?」とか非情になって突っ込んでみたかったですけど、いつものように黙っておきました。

父親が時折、携帯でメールしてくるので、先日は「お母さんも、孫でもいればまた違うんだろうにね」と返してみましたが、返信はまだありません。