やってほしいことを口に出してみることの思いがけない効用

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とある銀行口座をひとつ、昨日閉じてきました。

以前、雑誌社にいた時に大きな広告をしてくださっていた銀行さんのために、おつきあいで開けた口座でしたが、そんな口座がもうひとつ別な広告主さんのところにもあり、合計3つ。給与を無理やり3つの口座に分割して振り込んでいたりしました。

会社を辞めて、給与振込がなくなった段階で、サービスチャージ、というのが取られるようになりました。

月に10ドルとはいえ、わずかながら残してあった残金がいつしかなくなり、なくなったら自然と口座も消えるのかなと思っていたら、なんと残高にマイナス印がついています。

どうやらペナルティになってしまったようです。

そもそも、月に10ドルとはいえ、2年も放っておいたのだから240ドル、無駄にしたことになります。あれが買えた、これが買えた、と今頃悔やんでみたりして…。

20営業日以上放っておいた場合、正式なレポートを上げなくてはならず、クレジットヒストリーに差し障りますよ、という脅しみたいなお手紙もいただいて、慌てて電話をかけたのですが、支払い残高が残っていると口座の閉鎖は電話ではできないと言われました。

やむなく一番近いところにある、ビバリーヒルズのど真ん中の支店を訪問。

この支店はカスタマーサービスの見本みたいなところで、高級ホテルにでも来たような気にさせてくれます。

とはいえ、必要のない口座を月10ドル払ってキープする理由もありません。

説明をすると、納得してくださって、早速、口座閉鎖の手続きへ。あまりにも丁重な対応をしてくださるのを良いことに、担当の彼についつい聞いてみました。

「もう口座をクローズするのだし、このマイナス計上されている分、免除していただけませんか?」と。

なんとも図々しい感じですね(笑)。閉じるのだから、罰金くらい払えよ、というのが普通かもしれないのに。

しかし、その彼は、ニコッと笑って、「OK~」と言ってくれたのです。

何の交渉もなく、嫌がる風でもなく。にこやかにこう付け加えました。

「OK、免除しましょう。でもぜひ、次に銀行口座を開ける時は、当行を再検討してくださいね。こういうサービスは、当社ならではの柔軟さによるもので、いつもお客様の立場で考えたサービスを心がけているのです」

ほう、なるほど~。うまい~。本当なら気まずい場面なのに、お客さんを気持よくさせるのが、上手です。嫌な思いをしたら、二度とここへは来るまい、と思ってしまいますからね。

こんな場面、アメリカでは珍しくなかったりします。

クレジットカードの支払いを忘れて少し遅れてしまった時など、電話で支払いを済ませ(銀行口座から引き落としてもらう)、初めてだし、遅延料、勘弁してもらえないかな?と尋ねると、「OK~」って簡単にゼロにしてくれたりすることがあります。

うっかりな私は、何度かそれ、やっておりますが(恥)、いずれの時もOKでした。もちろん、普段からちゃんと支払っていることが大前提です。

車のリースを交換する時、バンパーの傷がひどかったりすると、本当は修理代の請求が来るのですが、次もまた同じメーカーの車を、同じディーラーからリースしていたりすると、たとえ請求書が来ても、後から免除してくれたりします。

毎回、ということではないのかもしれないけれど、担当してくれたセールスの人にごねてみると、OK、免除しましょう、と言ってくれたりするのです。

これは、人との関係でも同じことかなあ、仕事のいろんな場面でも、「我慢しないで」言ってみることで、自分が思っている以上に、譲歩してもらえることって、案外あるんじゃないかなあと思います。

人はとかく、「なんで自分ばっかり」とカリカリして、損した気分を鬱屈させがちです。

でも、そんな時に限って、ちゃんとクレームを言ったり、お願いしてみたり、譲歩の交渉をしていなかったりするんですよね。

言ってみたら、案外向こうはそんなに真剣に思っていることじゃなくて、「あ、ごめんね~」と折れてくれたり、「え、そんなつもりじゃなかったのに」と逆にあやまってくれたり。

仕事を抱えて、ひとりでアップアップして恨んでいないで、「こんなにたくさん仕事できません!」とちゃんと言ってみると良いと思います。

仕事を渡している方も気が付かなかったりするものです。

なのに、「私にばっかり仕事を押し付けて…」といじいじうじうじしてても始まらない。

ムダな我慢してると、Lose-loseな結果になっていくんですよね。

お金のことと、そういうことと、無理に結びつけてはいけないかもしれませんが、言わずに勝手に我慢してちゃいけないな、とりあえず言ってみる、って態度、大事なんじゃないのかな、とあらためて思った体験でした。

「交渉」というと、とても大げさで、たいへんなことのように思います。しかし、ただ、口にしてみるってだけで、それが結果的に交渉になってる場合も多いなあと思うのです。

これ、安くならない?って、ひとこと言えるか、言えないか。

できないことを我慢せずに、できません、NOと言えるか言えないか。

移住やデュアルライフのことについて聞かれたり話したりする機会が増えたこともあって、グローバルなコミュニケーションとは、ということを、最近はテーマとして掘り下げています。

その基本中の基本のひとつは、「我慢しないで言う」「とりあえず口にしてみる」「いやなことをいやと言う」ってことじゃないかなあ、と考える次第です。