お金儲けの先にあるもの。ドキュメンタリー映画「True Cost」から学ぶこと

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そろそろ日本にも上陸しようとしているネットフリックスには、上質なドキュメンタリーもたっぷり含まれていて、ちょっと真面目になりたい気分の時に、あれこれ探して観ています。

社会的なテーマがほとんどで、そこには現代の人や文化、風潮、課題、問題などがたくさん含まれていて、頭と心の刺激になるのです。

知らなかった現実、聞きかじっただけのニュースが、深く掘り下げられて、飽きないように上手に見せてくれる映画の数々は、本当にすぐれもの揃いです。

先日、見たのは、2015年5月に発表された「True Cost」というファーストファッションの裏側をテーマにしたドキュメンタリーです。

ネットフリックスでは無料ですが、こちらのウエブサイトで、3ドル99セントでご覧になることができます。

先日、日本に行った時、この映画にも出てくる某有名ファッションブランド「U」さんで、3枚980円の無地のTシャツなどを買ってまいりました。

「H」さんで5ドルで売っているものに比べて品質が良いし、今の日本で買えば為替の関係でさらに激安だし。980円と言えば、8ドルを切ってしまいます。それで、丁寧に作られたTシャツが3枚も手に入ってしまうという。

軽いし、かさばらないし、クルーネックとVネック、色違いで3枚ずつ、合計6枚買って、1960円。16ドルしないくらい。

Hさんはただ吊るしてあったり、畳んで並べてあるだけなのに、Uさんのは、一枚一枚、厚紙でしっかりと補強されつつ、きれいにパッケージに入れられていて、驚くばかり。

品物も、とても良いのです。上品な色づかい。丁寧な縫製。洗っても伸びたり褪せたりしない。

すみません、と、謝りたくなってしまいたくなるくらいに安過ぎです。そしてそれが「定価」なのだから、嬉しい反面、やはり「異常だな」と思います。

こうやって、安さに慣らされてしまうと、とくにTシャツみたいに、最初から消耗品と心得ているようなものに、たくさんのお金を払うことが難しくなってきたりします。

お金があるとか、ないとか、そういう基準ではなくて、この値段でこれが手に入ることを知ってしまうと、やはり「無駄なことはしたくない」心理も働きます。

でも、映画「True Cost」では、やはりその異常なまでの低価格の向こう側にあるものを、イヤというほど見せていきます。

  • 働く人々の人権を無視した工場の現場。
  • 原材料や生産現場の環境汚染と健康問題。
  • 買わざるをえない人々の心理。
  • 成長することしか知らない経済の原理
  • GMO、そしてフェアトレード

ファッションメーカーでも、そしてディスカウントストアでも、大量の服をとんでもない値段で売っていて、その物価たるや、何十年前よりもはるかに安かったりします。

クローゼットはあふれかえり、アメリカだとGoodwillとかSalvation Armyとかに寄付することもできるのですが、実はその10%くらいしか流通には回らず、あとは途上国に送りつけられて、そこで有害なごみの山になっているようです。

綿の生産現場では、大量の農薬散布の影響で作業者や周囲の人たちが亡くなっています(直接の因果関係は、もちろん証明されてはいないわけですが)。

その綿で作られた服を着ている私たちには、どこまでの影響があるのでしょう。

ビジネスを営むものとしては、ひじょうに大きく、広い視点に立って「社会的責任」を果たすべく、しっかりとした哲学を持っていかねばならないということ。

儲けだけを追っていくと、必ずどこかで悪魔の囁きがやってきます。こうすればコストは落とせる。誰にも気づかれずに利益が増やせるよ、と。

そこで、自分が及ぼしかねない影響を、サプライチェーンの水路の出だしから末端まで、きちんと考えて踏みとどまれるだろうかというところが、試されます。

消費者としては、では、こういう事実を知った時に、3枚980円のTシャツから目を背けることができるだろうか、という問題があります。

有機栽培で育てた綿花だけを使い、作業者の人権や周囲の環境を注意深く考慮した「良心的な」ビジネスだけから、商品を買うことができるのだろうか。

そこまでのストイックさを持って、向き合うことができるかどうかが試されます。

(「True Cost」のウエブサイトには、そういう良心的ファッションメーカーのリストが掲載されています。)

ちょうどそんな時、日本のウエブサイトで、このような記事がアップされていました。ちょうど自分が買ったTシャツと同じような値段だ、と思って、目が留まりました。

「270円のTシャツ」の自動販売機がベルリンに登場!ただし、購入にはある条件が・・・

この記事の下の方にあるビデオ、ご覧になってみると良いかと思います。彼らの行動が、何をどう変えていくのか分かりませんし、それは大海に小石を投げ入れるような、さざなみの一つも立てることができないほどの影響力かもしれませんが、記事の末尾にあるメッセージ通り、知ることで、何かが変わる場合もありますよね。