会社を辞めるのは、そんなにたいへんなことですか?

日本在住、24歳の男子から転職に関する相談がありました。

「就職活動をする際に、あまり会社のことをよく調べず、名前や待遇だけで選んでしまいました。働き始めてみたら、残業は9時までは当たり前。その後、会社の皆で上司を囲んで飲みに行くんです。

延々と続く愚痴ばかりの飲み会が終わるのは、終電があるから。途中で抜けて帰るなんて、とてもできない雰囲気です。未来に向けての勉強や読書もしたいのに、平日はまったく自分の時間が持てません。

1年も働いていない会社を辞めるなんて、現実から逃げているのかもしれませんし、皆からなんと言われるかと思うと、なかなか決断ができずにいます。」

日本を出てから、すでに21年になりますが、時々、日本って、ずっと時間が止まったままなの?と不思議になることあります。

このように、仕事環境の話を聞く時に、それを感じることが多いです。他にも、複数のクライアントから、こんな話を耳にします。

「残業は当たり前。社員も残業手当をあてにしているので、定時では帰ろうとしない。有給が取りにくい。旅行のために休むなんて、年に一度が限度。社内は期間限定の契約社員ばかりで、正社員への負担がとにかく多い」等など。

バブル経済破綻から立ち直ろうと、いろいろなことを切り詰めて企業は試行錯誤してきたのでしょうが、社員の幸せまで目が向けられていないのが大企業の現状なのかなあ、と感じざるを得ません。

僕はもともと大きな組織が苦手で、小さな会社ばかりを選んで働いてきました。ひとつだけ150名の会社はありましたが、それ以外は、すべて10~20名。最後に社長を務めたロサンゼルスの会社は、支社を合わせて40名ほどの会社でした。

29年の会社員生活で、5社の正社員となりました。平均で4~5年というスパンで働く場所を変えてきましたが、幸いなことに、そのたびごとに学びレベルが上がっていったので、後悔したことはありません。(もっとも最後の14年は経営者だったので参考にはなりにくいですが。)

キャリア生活を通して、とにかく残業は大嫌い。残業を生み出すような長い会議も大嫌い。突発的な割り込み仕事も大嫌い。接待なんて、もっての他。土日の付き合いは、基本したことなし。

もちろん必要ある残業はすすんでこなしましたし、夜や土日のイベント仕事はまた別な話。社長になってからは、オンもオフもない生活が続きましたけど、社員の頃は、結構、頑固に、そんな姿勢を貫き通していたかもと、思い返してみて思います。

でも、大丈夫なんですよね。そんなことでクビになったりしませんでした。もちろん、そういうことに許容度がある会社で働いていた、という意味なんだと思います。

相談してきた24歳男子には、それほど辛いなら、後のことなんか気にしないで、さっさと辞めちゃいなさいとアドバイス(笑)。

1年程度の遅れなら、第二新卒として採用してくれる会社もあるし、失敗を活かして、今度は自分のライフスタイルが実現できる環境を追い求めればいい。

組織はひとり抜けたくらいじゃビクともしないから、辞める前の引継ぎを誠意を持ってきちんとすれば、辞めた後のことは、あなたの心配することではない。

我慢すべきは、そんなところじゃない。転職は「逃げ」とは違う。

それより何より、大事なのは「職業人としての成長の機会」がそこにあるかないかだよ、と、セッションでは伝えました。

彼の場合は、とくに5年後の起業や海外移住をビジョンとして持っていたので、そのための学びを得なくては話しになりません。今の会社にいたところで、生ぬるい見習い程度のことしかさせてもらっておらず、成長なんて、何年経っても望めない話。

独立希望のクライアントに僕が伝える転職のキーワードは次のふたつ。どちらかに当てはまる仕事を探しなさい、とアドバイスします。もちろん両方当てはまるのがベストです。

1.稼ぐ力を身につけられるか?
2.学ぶ機会にあふれているか?

起業を前に、ワークライフ・バランスとか、甘いことを言っていてもしょうがないので、それは事業が無事、軌道に乗ったら考えなさい、とアドバイスしています。勉強は、会社の中でさせてもらえばいい。そういう厳しい話を選びなさい、ということです。

現在、次のキャリアを考えながら、数名のクライアントさんが、求人とにらめっこしています。探している職種や、望む条件が、以前とはまったく違った世界観から出てきているものなので、求人の見方も選択の基準も、ことごとく異なります。

ただ単に条件が良いとか、有名だとか、安定しているとか、漠然とした基準で求人を見るのではなく、「その先にある人生」とをつなぐ意義深い「点」であることを意識するのが重要です。

ライフコーチは、「ライフ」全般をバランス良く整えて、理想の未来を実現するためのものですから、当然、このようなキャリア相談も多くなります。仕事歴29年、内、経営幹部歴16年で培った経験値を元に、最適なキャリアライフ構築もお手伝いしています。

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